【Visual Studio Express】ダウンロードや活用方法を徹底解説!

プログラマーやエンジニアが仕事を始める上で重要となるのが、開発環境を整えることです。
開発環境を整えるとは、簡単にいうと「プログラムを書き始めることができる状態にする」ということです。
使用するプログラム言語によっても多少の違いはありますが、ただパソコンがあるだけではプログラミングは始められません。
一般的なプログラム言語には、統合開発環境(IDE)というプログラミングエディタのようなソフトウェアが提供されていて、プログラムを作る時はこのソフトウェアを使用します。
その統合開発環境の一つに、Microsoftが提供している「Visual Studio」というソフトウェア開発環境の製品群があります。
この記事では、「Visual Studio」シリーズやExpressエディションについての紹介、Visual Studioのインストール方法から、基本的な使い方までを詳しく解説します。
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Visual Studio Expressとは
「Microsoft Visual Studio」とは、Microsoftが開発・提供したソフトウェア開発製品群と、それらを管理する統合開発環境のことです。
Windowsアプリ開発はもちろん、次のようなアプリケーション開発を行うためのさまざまな機能が搭載されています。
- Androidアプリ
- iOSアプリ
- Officeツール
- Webアプリケーション
- Azureアプリ
また、SQL Server データベースと Azure SQL Databaseを使った開発や、Visual Studioの拡張機能を自分で作成することも可能です。
全ての機能を使える製品や、使える機能の数によっていくつかのエディションが用意されています。
このうちの機能制限はありますが、無償で使えるエディションが「Visual Studio Express」です。
Visual Studio の歴史
「Visual Studio」はパソコンやスマートフォンの進化に合わせて、現在まで改良され続けています。
Visual Studio 2012
「Visual Studio 2012」は、2012年9月12日に公開されたバージョンです。
スマートフォンが普及する以前は、開発者もユーザーもパソコンでアプリケーションを使うのが一般的でした。
そのため、アプリケーションはパソコンユーザー向けに作られ、一つの言語でシステムやアプリケーションを開発していました。
しかし、Webアプリケーションが普及したことにより、既存のシステムをWeb対応させる際に、複数の言語で開発する必要性が出てきたのです。
このバージョン以前は、「Visual Basic Express」や「Visual C# Express」など、開発言語ごとに分かれた製品はありましたが、「Visual Studio 2012」からターゲットプラットフォームごとの製品となり、複数言語での開発が可能となったのです。
Webアプリケーションの利点は、パソコンとスマートフォンなどの異なるプラットフォームからアクセスできることです。
「Visual Studio 2012」からは、ソリューション内に開発言語の違うプロジェクトを混在させることも可能になり、より広範囲のシステム開発に対応できるようになりました。
開発するプラットフォームの種類によって、次のような製品があります。
- Visual Studio Express 2012 for Windows 8
- Visual Studio Express 2012 for Windows Desktop
- Visual Studio Express 2012 for Web
- Visual Studio Express 2012 for Windows Phone
ターゲットプラットフォームごとの製品は、この後のバージョンに受け継がれています。
Visual Studio 2013
「Visual Studio 2013」は、2013年10月17日に公開されたバージョンです。
このバージョンから、Gitを用いたバージョン管理に標準機能で対応しています。
「Visual Studio 2013」はインストール時に、「.NET Framework 4.5.1」も一緒にインストールされるため、別途行う必要がありません。
また「Visual Studio 2013」では、次のようなアプリケーションが開発できます。
- Win32プログラム
- .NETプログラム
- Windowsストアアプリ
Visual Studio 2015
「Visual Studio 2015」は、2015年7月20日に公開されたバージョンです。
.NET Frameworkはバージョン4.6にアップグレードし、OSはWindows10に対応できるようになりました。
「Visual Studio Express 2015 for Windows 10」では、スマートフォンやタブレット、PC、Xbox、IoTデバイスなど、あらゆるWindowsデバイス上で動作するUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリの開発も可能です。
その他の主要な新機能は以下のとおりです。
- iOSやAndroidなど各種モバイル端末に向けた、Apache Cordovaなどを用いたクロスプラットフォーム開発機能の強化
- C# 6Visual Basic 14TypeScript 1.5などの新言語に対応
- ASP.NET 5に対応
- Roslyn(英語版)採用などによる言語解析に対応
- IDEサポートの改善
Visual Studio 2017
「Visual Studio 2017」は、2017年3月7日に公開されたバージョンです。
ソフトウェアのファイルサイズが大きく、インストールに時間がかかることがVisual Studioのデメリットでしたが、必要なコンポーネントを選んで、効率的にインストールできるようになりました。
古いバージョンの「Visual Studio」を使っていても上書きされることがないため、共存させることが可能です。
プログラマーがコードを書くバックグラウンドで、自動的にユニットテストを実行する「ライブユニットテスティング」などの新機能も搭載され、開発の効率がさらに向上しました。
Visual Studio 2017からは、「ワークロード」という概念が導入されています。
ターゲットプラットフォームごとに分けていた製品を、「ワークロード」として選択する仕組みになっています。
ワークロードは、次のように分類されています。
■ Windowsのワークロード
- UWPアプリ開発
- .NETデスクトップ開発
- C++によるデスクトップ開発
■ Web&クラウドのワークロード
- ASP.NETとWeb開発
- Azureの開発
- Node.js開発
- データの保存と処理
- Office/SharePoint開発
■ モバイル&ゲームのワークロード
- .NETによるモバイル開発
- Unityによるゲーム開発
- Javascriptによるモバイル開発
- C++によるモバイル開発
- C++によるゲーム開発
■ その他のツールセット
- Visual Studioを使いやすくする拡張プログラム(拡張機能)
- Linuxをターゲットとしたプログラム
- .NET Coreアプリ開発のためのワークロード
ワークロードの概念が導入された背景としては、同じアプリケーションを違うプラットフォーム間で共有する需要が増えたことが関係しています。
この需要によって複数のプラットフォーム間でコードを共有できるようになり、効率的に開発できるようになりました。
また、「Visual Studio 2017」では、Expressエディションの提供は最後となり、公式サイトではアーカイブと同等の扱いになりました。
今後は「Visual Studio Code」または「Visual Studio Community」へ移行することが推奨されています。
Express 2017 for Windows Desktop
ダウンロードページ
visual studio 2019
「Visual Studio 2019」のローンチイベントが、2019年4月2日に開催されることが発表されました。
2019年3月現在、プレビューリリースである「Visual Studio 2019 Preview」をインストールすることで、「Visual Studio 2019」の新機能を無料体験することができます。
主な新機能は次のとおりです。
- 新しいスタートウィンドウ
⇒ スタートウィンドウから、開発サービス「Azure DevOps」にサインインしてコードを参照したり、ワンクリックで接続や複製ができたりと、作業の効率化を図ることが可能となります。
- デバッガーの強化
⇒ デバッグ時に使用するウォッチウィンドウなどの検索機能が、よりシンプルなインターフェイスになりました。詳細検索機能はドロップダウンに変更され、検索候補のリストが探しやすくなっています。
- Visual Studio Live Share
⇒ プロジェクトを共有に設定すると、自分のコードをチームメイトが読み取り、移動・編集・デバッグをすることができます。Visual Studio 2019 Preview では、既定でインストールされるサービスです。
Visual Studio 2017のエディションごとの違い
「Visual Studio 2017」の、エディションごとの違いを説明します。
■ Visual Studio2017の主なエディション
エディション | 有償/無償 | 概要 |
Enterprise | 有償 | 最上位製品 高度な機能をサポート |
Professional | 有償 | 通常製品 |
Community | 無償 | 一部機能を除いて Professionalとおおむね同等の機能を持つ |
Visual Studio Enterprise
Visual Studio Enterpriseエディションは、全ての機能が使える最上位のエディションです。
アーキテクチャの設計やチーム開発時のファイル管理、高度なコード品質チェック、各種テストツールなど、開発を効率的に進めるためのさまざまな機能を搭載しています。
Professionalで使える機能に加え、テストツールの種類やクロスプラットフォーム開発用の機能が充実しています。
最大で90日間のお試し利用が可能です。
Visual Studio Professional
Visual Studioの通常版のエディションです。
こちらもEnterpriseには劣りますが、チーム開発時のファイル管理や高度なコード品質チェックなど、開発を効率的に進めるためのさまざまな機能を搭載しています。
また、Professionalには、「コードレンズ」という新機能が搭載されています。
これはクラスやプロパティ、メソッドなどの利用箇所と、変更履歴情報がエディターに直接表示される機能です。
こちらのバージョンも、最大で90日間のお試し利用が可能です。
Visual Studio Community
Visual Studio Communityは、2013年より提供されているエディションで、無償で利用可能なソフトウェアです。
Professionalとほぼ同等の機能が使用できますが、大きな企業での商用利用についてはライセンスの制限があります。
Visual Studio Communityにサインインすると、Visual Studio Dev Essentialsの開発ツールやクラウドサービスなどの利用が可能です。
また、2017以降のバージョンでは、Communityの利用がMicrosoft社から推奨されています。
Visual Studio の導入方法
Visual Studio の具体的な導入方法を説明します。
「Visual Studio 2017」を例にして、インストール方法を解説します。
Visual Studio 2017のダウンロード・インストール
「Visual Studio 2017」は、Web用(for Web)やユニバーサルWindowsプラットフォーム用(for Windows 10)のバージョンはありません。
「Visual Studio 2017」のインストールは、Webインストーラーで行います。
まず、公式サイトの「Express 2017 for Windows Desktop」のリンクから、インストーラーをダウンロードします。
ダウンロードしたWebインストーラーをダブルクリックし、インストール・ウィザードの手順に従ってインストールしてください。
以前のバージョンのダウンロード方法
以前のバージョンをダウンロードするには、サブスクリプションプログラムの「Visual Studio Dev Essentials」に参加する必要があります。
-
- サインインを要求された場合は、Microsoftアカウントでサインインします。
- ページ上部のメニューから、「ダウンロード」のページへ移動します。
- ページの検索フォームから必要なバージョンを検索すると、該当のバージョンのダウンロードページへ移動できます。
オフラインのときにインストールする方法
「Visual Studio 2017」をインストールする場合、指定のファイルをダウンロードする必要があります。
ダウンロードするファイルのボリュームが大きいため、平均的な回線速度でもダウンロードが完了するまで12時間程度かかってしまいます。
公式で公開されているのはオンラインのストーラーのため、ネット接続が不安定な環境や回線速度が低い場合、インストールがなかなか進まない状況になりがちです。
解決策の一つとして、オフラインのPCでもインストールできる方法を紹介します。
ここでは「Visual Studio 2017」のCommunityを例に説明します。
■ オフライン時「Visual Studio Community 2017」をインストールする流れ
※ダウンロードされるファイルのサイズは40GBを超えますので、パソコンの空き容量が足りているか、事前に確認しておきましょう。
- Visual Studio Community 2017のインストーラーをダウンロードします。
「vs_community__xxxxxxxx.xxxxxxx.exe」という書式のファイル名です。
※「xxxxxxxx.xxxxxxx」にあたる部分は、リリース番号です。後述では省略します。
- ダウンロードしたファイルのあるフォルダ内の空きスペースで、Shift+右クリックを行い、表示されるメニューからコマンドプロンプトを起動させます。
- コマンドラインに以下のコマンドを入力します。
vs_community.exe ?layout c:\vs2017offline`
実行ファイル名の部分は、ダウンロードされたファイル名をコピーして貼り付けるのがおすすめです。
例文の「c:」以下の部分は、インストールしたいディレクトリのパスを入力してください。
実行すると別のコマンドプロンプトが立ち上がり、ファイルのダウンロードが開始されます。 - ダウンロードが完了すると、Visual Studioのダウンロード用コマンドプロンプトが自動で閉じます。
これでオフラインのインストールファイルの作成は完了です。
- 指定した場所に実行ファイルがあることを確認します。
実行ファイルをダブルクリックし、インストール・ウィザードの手順に従ってインストールしてください。
上記の例では、すべての言語、及びすべてのコンポーネントがダウンロードされます。
ダウンロードする言語やコンポーネントを選択したい場合は、コマンドの入力時にオプションを追加することで選択が可能となります。
オプションを選択する場合のコマンドは次のとおりです。
- 英語と日本語の全コンポーネントをダウンロードする場合
vs_enterprise.exe ?layout C:\vs2017offline ?lang en-US ja-JP - 日本語のみの全コンポーネントをダウンロードする場合
vs_enterprise.exe ?layout C:\vs2017offline ?lang ja-JP - オプションのコンポーネントをダウンロードする場合
vs_enterprise.exe ?layout C:\vs2017offline ?add Microsoft.VisualStudio.Workload.Azure
また、オフライン時の「Visual Studio Express 2017」を最新バージョンに更新する場合は、インストールフォルダからvs_community.exe(インストーラー)を実行します。
試用期間30日間のライセンスを解除する方法
ソフトウェアをインストールしてから30日が経過すると、「評価期間は終了しました。製品のロックを解除するにはサインインしてください」というダイアログが表示され、Visual Studioが使用できなくなります。
しかし、30日間という試用期間を過ぎてしまっても、Microsoftアカウントにサインインすれば、「Visual Studio Community 2017」の継続利用が可能となります。
試用期間を解除するにはインターネットへの接続が必要ですが、サインインして続行の手続きをした後は、サインアウトしてもVisual Studioを使用することが可能です。
Visual Studio の使い方
Visual Studioを使った初歩的なプログラミングの例を紹介します。
■ 基本的な用語
プロジェクト | プログラムとリソースを集めて管理したものの単位 |
リソース | プロジェクトの管理対象となるソフトウェアの素材。 プログラム、画像、音声など |
ソリューション | 複数のプロジェクトをまとめて管理したもの |
Visual Studioでプロジェクトを作成する
今回はC#用のプロジェクトを例に、作成方法を説明します。
- 新規プロジェクトを作成します。
Visual Studioを起動して「新しいプロジェクト」のアイコンをクリックします。
- 左側のツリー型メニューから、「その他のプロジェクトの種類」「Visual Studioソリューション」を選択すると、中央の欄に「空のソリューション」というアイコンが表示されます。
画面下の部分から、ソリューションに名前をつけて「OK」ボタンで保存します。 - これで空のソリューションが作成されました。
このソリューションに新しい項目を追加します。
作成したソリューションを選択してメニューを開き、「追加」「新しい項目」の順に選択します。 - クラスやファイル、テンプレートなどの一覧が表示されるので、「Visual C# クラス」を選択します。
これで「Visual C# クラス」を持つプロジェクトが作成できました。
プログラムの作成と実行
C#プロジェクトが作成できたら、画面の「Program.cs」という部分にサンプルコードを入力してみましょう。
以下のサンプルコードは、画面に文字を表示するプログラムです。
■ サンプルコード ■
プログラムが書けたら、メニューの「ビルド」から「ソリューションのビルド」を選択します。
ビルドとは、コンパイル等のプログラムを実行するための準備工程です。
「出力」というウインドウが開いて、以下のように表示されたらビルド成功です。
????????????????????????????????-
===ビルド:1 正常終了、0 失敗、0 更新不要、0 スキップ===
????????????????????????????????-
ビルドが成功したら、プログラムを実行してみましょう。
メニューの「デバッグ」から「デバッグなしで開始」を選択します。
プロンプト画面が表示されたら、実行完了です。
Windowsユーザーの注目を集める開発環境「Visual Studio Express」
Windowsの生みの親でもあるMicrosoftが提供するVisual Studio Expressは、特にWindowsユーザーのプログラマーにとってメリットがたくさんあります。
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- あらゆるデバイスのアプリケーションを開発できる
- コードエディタやデバッガを搭載しており、開発を効率化できる
- バージョン管理が可能で、多人数での開発の際にも便利
- Windowsユーザーには馴染みのあるインターフェイス
時代に合わせてさまざまなデバイスが開発され、プログラミングの方法は日々進化しています。
Visual Studio Expressなどの統合開発環境も、時代に合わせて機能がバージョンアップされているため、新しいアプリケーションを生み出すための強力なツールとなるでしょう。
開発者として最前線で活躍していくためには、常に最新の情報をチェックすることが大切です。
- 「Visual Studio」は、Microsoftが提供している統合開発環境
- 2017以降のバージョンでは、Communityの利用を推奨
- Microsoftアカウントでログインすれば、試用期間のロックを解除できる
- 常に最新の情報をチェックすることが大切