ニュース

NEWS

【レポート】 ブロックチェーンに関する技術を習得するには?

2020年01月31日 レポート

中国での「デジタル人民元」構想の発表や、フェイスブックが主導となり計画している「リブラ」などにより注目が進むブロックチェーン技術。日本でもキャッシュレス化が進むなど、数年以内にはブロックチェーン技術を持つエンジニアのニーズが高まると予想されます。パーソルテクノロジースタッフでは以前より、ブロックチェーン技術に関するエンジニア向けイベントを開催していますが、1月23日にブロックチェーン関連技術の学び方について、第一線のエンジニアから学ぶトークセッションが開催されました。

今回のイベントは昨年より3回にわたって開催されて来たブロックチェーンに関するエンジニア向けイベントの最終回。1回目ではブロックチェーンについて知り、2回目では実際にハンズオンで触れてみるなどの体験を行ってきました。3回目は、ブロックチェーン領域の第一線で活躍するエンジニアたちが登場し、ブロックチェーンに興味を持ったきっかけや、まだブロックチェーンでのビジネスが難しい時期に、どのように経験を身に付けていったのかといった点についてお話いただきました。

登壇いただいたエンジニアは、黎明期よりブロックチェーンに携わり、経産省「ブロックチェーン検討会」委員も務めた志茂 博さん(コンセンサス・ベイス株式会社 代表取締役)と、元パーソルプロセス&テクノロジーのエンジニアで現在はフリーランスエンジニアとしてブロックチェーンゲームの開発プロジェクトに参画する萬濃 忠さん(フリーランス)。進行役は、ミスビットコインとして知られ、様々な企業でCEOやファウンダーなどを務めている藤本 真衣さんが務めてくださいました。

藤本:お二人はどんなところでブロックチェーンに興味を持たれたのですか?

萬濃:最初はAWSとかAzureなどを使用するクラウド関連の仕事をしている中で、マイクロソフトも分散代表技術に力を入れ始めていたし、Amazon、Googleなどの各社が投資していたことから、新しい技術で将来有望なのかなと興味を持ったのがきっかけです。少し調べてみると思想や技術が面白いし、ぶっちゃけこれから稼げそうだなと思いました。でも、仕事にするのは難しいなという感じがしました。ブロックチェーン技術について、ビジネスになると思っている会社は当時少なかったですし、アーリーアダプターにリーチできればいいかもしれないけど、所属する会社でそこに営業をかけていくのは難しいような気がしました。それで、これは「自分が行くしか、やる方法がない」と考え、イベントで知り合った人に声をかけてもらいブロックチェーン関連の開発をしている会社に転職しました。直近はフリーランスとして、ブロックチェーンゲームの開発に携わっていて、今年春~夏にリリース予定で今進めています。

志茂:私は2011年にTwitterで興味を持ったのがきっかけです。その後、Mt.Goxが渋谷にできたりしてビットコインの革新性へ注目度が高まっていく中、「早く参入しなきゃ!」「ビジネスやらなきゃ!」と考えていたのですが、なかなかビジネスとしてビットコイン関連の仕事に出会えず、起業できたのはその2年後でした。その間は触れたいのに案件がないから、身を削りながら調べたり学んだりしている状態でしたね。当時、詳しい技術者は日本人では一人もいなかったと思います。それで、海外のサイトや文献を見て学んだり、海外出身の技術者に質問したり、そういう人が集まるイベントに参加したりしながら学んでいきました。

藤本:早い時期からブロックチェーンに携わっていらっしゃいますが、ここ数年のブロックチェーン産業をどのようにご覧になっていますか?

志茂: 2016年ころから世界の銀行がブロックチェーンだと言い出して、日本の金融機関もザワザワしてきて。2017年は仮想通貨バブルでようやく盛り上がりましたね。

藤本:2017年は「FinTech」という言葉が流行った年ですね。ICO(※1)もすごく多かったです。

萬濃:一方で2017年の盛り上がりに比べると、2018~19年でマーケットは盛り下がりましたよね。ブロックチェーンが期待されて、幻滅されて、今は谷底になった…という感じです。

志茂:まさに今は幻滅期と言えますが、いい意味でいうと落ち着いています。2017年のブロックチェーンのブームで参入してきた一部のプレイヤーが撤退しており、地固めができた感じがします。

萬濃:昨年6月にフェイスブック社が「リブラ」を発表したり、10月には中国で習近平によるブロックチェーン技術を推進する発言や中央銀行によるデジタル人民元構想の発表があったことで流れが変わってきたと感じています。その後、ヨーロッパを含む各国の中央銀行が中央銀行デジタル通貨の研究・開発を進める発表をしたこともあって、確実に前進している印象があります。日本だとまずはエンタープライズ向けのブロックチェーンが先行して進んでいくように感じています。

ブロックチェーンに興味を持ったら、どのように学ぶべきか?

藤本:先日中国のブロックチェーン関連のカンファレンスに参加しました。ちょうどその2週間くらい前にデジタル人民元構想が発表されたところですごく勢いがあるイベントだったんです。ブロックチェーンってどういうものなのか?という教育を国が官僚にしていたりして…、中国では国を挙げてブロックチェーン技術に取り組む大きな流れが発生しています。今後、日本でもブロックチェーン技術を持つエンジニアニーズが高まっていくと思いますが、現在他領域に携わっているエンジニアが今後ブロックチェーンに関連する仕事をしたいと思った時、エンジニアはどのように取り組んでいけばいいのでしょうか?

萬濃:まずは今やっているエンジニアリングの仕事や技術をしっかりやりながらブロックチェーン取り組んで行くことが良いと思います。ブロックチェーンだけでサービス、システムができている訳ではないので、私も普段の業務はサーバー、フロント、インフラ構築など普通のWeb開発、システム開発と変わらないことをやることが多いです。「ブロックチェーンに詳しいけど開発ができない」という人よりは開発力がある人が求められます。フロントエンドやサーバーサイドなり、何らかのエンジニアリングができる人であればブロックチェーンのキャッチアップはいくらでもできます。

志茂:私は自分で何をしたいのか決めることが大事だと思います。ブロックチェーンって横の幅も縦の深さもすごい。イーサリアムがいいという人もいれば、ビットコインがいいっていう人もいて、宗教くらい多様なんです。しかもそれぞれのトレンドが移り変わるスピードも速い。半年ごとに常識がドンドン変わっていくのでキャッチアップするだけでも大変です。だから、その中で自分はどれをやりたいのかを決めて学んだほうが、効率よく学べると思いますね。

藤本:スピードは本当に速いですよね。私も追いつけなくて悩んでいます。

志茂:私もまだまだ分からないことが沢山あります。

ブロックチェーン技術への着手、まずは書籍から

藤本:ところで、私は『STAR WARS』シリーズをどこから見たら良いんだろう…って迷うんですけど(笑)、ブロックチェーンについてもどこから学ぶのが良いか着手のしかたが分からないエンジニアの方がいると思います。お二人はどのようにインプットするのが良いと思われますか?

萬濃:いろんなやり方があると思いますが、個人的には書籍がおすすめです。ブロックチェーンの世界って技術の流れが速いので、書籍になった時点で情報が古くなってしまっていることは多いですけど、基本的な理論が体系立てて整理されていますから。

志茂:私もまとまっているものを読むのが大事だと思います。Web上にも詳しい情報はたくさんありますし、ビットコインとかイーサリアムのちゃんとした本を読むと理解が深まりますね。弊社でもBlock-chain.jpという技術・ビジネスの両面でブロックチェーンを解説したブログの運営や、入門書籍「ブロックチェーンの仕組みと開発がしっかりわかる教科書」を執筆しており、積極的に情報発信に努めています。

藤本: SNSでブロックチェーン関連の著名人をフォローするのもおすすめです。Twitterで著名人をフォローして、最近どんなことをしているのか、他のエンジニアと何を議論しているのか見るだけでも勉強になります。

萬濃:さらに最新情報が知りたければ、公式ドキュメントを見るのが良いですね。Webで情報を調べる時も、それがいつの情報なのか、どのバージョンなのか、というのはきちんと確認しつつ。それで、さらに興味を持ったら自分でノードたててみたりして実際に触ったり体験してみたらいいと思います。

藤本:エンジニアとしてブロックチェーンと親和性の高い注目の技術領域はありますか?

萬濃:さっきお話したフロントエンドとかサーバーサイドの開発以外で言うと、やっぱり公開鍵暗号技術ですかね。最終的なアウトプットはWebサービスになることが多いので、セキュリティエンジニアを求めている会社は多いと思う。今、自分が手伝っている会社でも分かる範囲でセキュリティやっていますけど、セキュリティエンジニアに手伝ってもらえたら嬉しいですよね。

志茂:私もセキュリティだと思います。コインって、すぐに盗まれますから。(笑)

萬濃:あとはモダンな開発環境というか、アジャイル、スクラムでの開発経験がある人も良いと思います。

ブロックチェーンで大きく変わる産業

藤本:VeChainとDNVGLの提携など、グローバルの実証実験が続いています。
例えば、DNVGL はノルウェーの財団があるのですが、企業の社会的責任に関するISOガイドに関するエキスパートで地球温暖化対策とCO2の関係に関するエキスパートとしても有名です。
そのDNVGLが、VeChainと一緒にカーボンクレジットの取り組みをやっています。
電気自動車に乗ることで、石油の自動車と比べてどんだけCo2削減に貢献したか
走行距離に応じて、カーボンクレジットがもらえる仕組みです。評価部分をDNVGLが作っていて自動車メーカーのBYDが導入しています。こういうところで使われていくのも面白いですよね。お二人は今後ブロックチェーン技術で大きく変わる産業はどこだと思われますか?

志茂:需要ベースでいうと銀行、証券、保険、サプライチェーン、電力などの業界でしょうか。

萬濃:私はブロックチェーンゲームに携わっていますけど、ゲーム領域では今後も大きく成長していくと考えています。eスポーツが流行していますし、NFT(Non Fungible Token)で世界に一つだけのアイテムを証明しデジタルに価値をつけることができるようになったことで、もっと盛り上がっていくのではと考えています。

藤本: お二人はブロックチェーンのどういうところに面白さを感じられますか?

萬濃:分散金融は革命的だと思っています。初めは単純に人から人に対して、ウォレットアプリからインターネット上で価値を送ることが出来るのはすごいな、っていうことだったんですけど、最近ではアメリカに銀行口座をもっていなくてもドル建てのような資産を所有することが出来て、それで簡単に高い利息を稼ぐことができるようになっています。また、エンジニアであればそれをアプリとして自分で作ることもできてしまいます。個人的にはそういうのを作っていきたいなと思っています。

志茂:姿の見えない攻撃者が大勢いるインターネット上で、お金が動いているってありえない状態だと思うんですよね。オープンな環境でお金のやり取りができて、昔だったら考えられなかったような革新性だと思います。長年関わっていますけど、新しい発想や技術がいろいろ出てきて何年も飽きないですし、ずっとブロックチェーンと向き合っていると「お金の価値って何なのか?」「何のために国はあるのか?」とか、今まで考えたことがなかったようなところにたどり着くんです。ブロックチェーンについては、お金が儲かるとか投資の話がフォーカスされがちですけど、そんなことを抜きにしてもすごく面白い。間違いなく世界が変わる技術ですから。

※Initial Coin Offeringの略。新しくデジタル通貨(トークン)を発行することで、資金を調達する方法。IPOのコイン版。