Special Talk | 特別対談

"AIの勘”を信じることが成功のポイント - マッチングAIプロジェクトチーム対談

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エンジニアの人材派遣を行うパーソルテクノロジースタッフ株式会社では、2019年3月より独自開発AIを導入し、登録スタッフ様と企業様のマッチングに活用しています。

AIの開発・運用というこれまでにない新しい試みにあたり、ご協力いただいたのが、最先端の人工知能・機械学習技術を用いてオーダーメイドでAIモデルの開発・導入支援などを行う株式会社Laboro.AIです。

今回はLaboro.AIの代表取締役CEOであり今回のプロジェクトマネージャーを務めていただいた椎橋さん、機械学習エンジニアである濱本さん、そしてパーソルテクノロジースタッフ サービス企画グループの枝並さん、松本さんにご登場いただき、AI開発・運用のポイントについてお聞きしました。 (以下、敬称略)

ベンダーとクライアント企業という枠を超えた協業が実現

――自己紹介を兼ねてプロジェクトにおける役割を教えてください。

枝並:「パーソルテクノロジースタッフ サービス企画グループの枝並です。今回のマッチングAI開発で実現したいことをLaboro.AIさんにお伝えし、ほしい要素やリリース時期を決めるなどプロジェクトを推進する役割を担いました」

松本:「同じくパーソルテクノロジースタッフ サービス企画グループの松本です。私が担当したのは機械学習に活用するデータの前処理、およびマッチングAIのユーザーインターフェース部分です」

椎橋:「マッチングAIをパーソルテクノロジースタッフさんと共同開発させていただいた、Laboro.AIの代表の椎橋と申します。プロジェクトマネージャーとして今回の案件に携わっております」

濱本:「Laboro.AIの機械学習エンジニアで濱本と申します。今回のマッチングAIでも学習アルゴリズムを含む学習・予測エンジンのシステム開発を担当しました」

――プロジェクトはどのように進行していったのでしょうか。

枝並:「人材と企業様のマッチングに機械学習を活用するプロジェクトが立ち上がり、構想段階でLaboro.AIさんに相談させていただきました。やりたいことをお伝えした上で、どういう方向で進めていくのかなど、コンサルティングも含めてお願いしました」

椎橋:「既成品のパッケージを使うのかどうかというところも含め、どうやって実現していくのかを綿密に議論しました。要件を詰めていったところ、やはり今回のマッチングAIはパーソルテクノロジースタッフさんの競争力に関わるコアな部分ですので、既成品のソリューションを購入して入れるのではなく、データに合わせてきちんとつくることが有効ではないかという話になり、開発も我々の方でやらせていただくことになりました。結果として、ベンダーとクライアント企業という枠を超えた協業をさせていただけたと思います」

既存のエンジンやBIツールをカスタマイズすることで時間と費用を削減

――開発におけるポイントについて教えてください。

椎橋:「今回は開発のスケジュールがかなりタイトだったので、データを学習するエンジンはもともと我々が持っていたものを再利用し、カスタムすることでつくりあげました。さらに登録スタッフ様と企業様をマッチングする際、“絶対にマッチしない組み合わせ”があらかじめわかっていたので、その部分はルールベースで作成しておくことで効率化しています」

松本:「データは私の方で、Laboro.AIさんにアドバイスをいただきながら作成しました。また、インターフェースについてはBIツールを活用することで開発にかかる費用を抑えているのがポイントです」

濱本:「機械学習ではただデータがあればいいというものではありません。精度を上げるためにはデータがどれだけ機械学習にとって使いやすいきれいな状態になっているのかも重要なポイントです。その点、松本さんからいただいたデータは理想的な形になっていたので、そこも良かったですね」

椎橋:「もともとパーソルテクノロジースタッフさんは通常の業務用データベースとは別に、データ解析用の基盤を持たれていました。そのおかげで今回、かなり効率的に進めることができました。おそらくAI導入以前から、データ解析を想定して早めに仕組みを作られていたのだと思います」

従来のITと異なり機械学習は運用後が本番

――開発において苦労された点はありますか。

濱本:「データの取り扱いが大変でした。通常、機械学習のモデルをつくる場合は、データをいただいて我々の環境で学習を行います。ところが、パーソルテクノロジースタッフさんの場合はデータが個人情報ということもあり、外部に一切出すことができなかったのです。そこでパーソルテクノロジースタッフさんに学習用のサーバをご用意いただき、こちらであらかじめ作成した学習の仕組みをインストールしてモデルを作りました」

枝並:「今回のプロジェクトは、パーソルテクノロジースタッフにとって今までになかったまったく新しい試みでした。従来のフレームワークで動かせないため、プロジェクト自体がスクラッチのようで、想定外のことも多かったですね。エンジンの中身や機械学習の精度はもちろん重要ですが、加えてプロジェクト自体の進め方や、経営層とのすり合わせ、既存の仕組みをどれだけ使いこなせるか、インフラとの接続をどれだけスムーズに行えるのかなど、各ステップでつねに課題と向き合うことになりました。それは運用をスタートしたからといって終わりではなく、今もどうすれば精度を上げられるのか、どのようにチューニングしていけばいいのかなど手探りでの運用が続いています」

椎橋:「機械学習の特性上、従来のITとは作り方がまったく違いますからね。従来のITはアジャイルであっても、作った通りには動くものです。一方で機械学習の場合はデータを入れてみて初めてわかることも多く、運用後がむしろ本番といえます」

濱本:「データを与えるほど精度は上がるのですが、テストデータの精度のみを追って学習させすぎると、今度は過学習状態になって本番運用では逆に精度が下がってしまうこともあります。このあたりが機械学習の難しいところです」

AIの運用で大事なのは"AIの勘”を信じること

――マッチングAIの現状と今後の展望について教えてください。

椎橋:「リリースしてから数ヶ月間は機械学習の精度を向上するための期間です。もちろん、リリース前のテストデータで検証は行っていますが、それはあくまで定量的な話。今後はユーザーからの声など、定性的なフィードバックを反映しながらチューニングを行っていくことになります」

枝並:「私たちとしても前例のないチャレンジということもあり、AIが出す答えが果たして"正解”なのかどうかは、ユーザーの声で判断するしかないのが現状です。ただ、ユーザーの声がすべて正解なのかというと、それもわかりません。そのあたりも含めて今後どうしていくのかを考えていこうと思っています」

濱本:「今後は教師データの質も含め、さらに精度向上の可能性を探っていくことになるでしょう。またアルゴリズムにも改善の余地があるかもしれません。たとえばデータの重み付けの調整です。1人の登録スタッフ様に紐づく各カラムに重み付けをしてチューニングすることで、精度が上がることは十分考えられます」

枝並:「精度はもっともっと上がってほしいですね。ただ、精度が上がったとしても、"なぜ上がったのか”についてはわからないわけですよね。私たちはAIとはそういうものだと知っていますが、詳しくない人に説明する場合、『AIがなぜそう判断したのかはわからないものなんです』と言ってもなかなか納得してもらえないかもしれません」

椎橋:「たしかに、AIはブラックボックスで中身がわからないから不安だと仰る方は多いです。でも、どんな企業にも熟練した方がいて、そういった方の"勘”は説明できないけれど当たることも多いですよね。そして社員の方もその方の”勘”は信じておられます。AIが出す答えもそれと同じです。今後、AIを使いこなすために大事なのは"AIの勘を信じる”ことだと思います」

枝並:「なるほど! "AIの勘を信じる”というのは良いキャッチフレーズですね。これから使わせていただきます(笑)」

※本文中に記載の社名・部署名等は取材時点のものです(2019年4月19日時点)

株式会社Laboro.AI 
代表取締役CEO

椎橋 徹夫

米国州立テキサス大学 理学部 物理学/数学二重専攻卒業。2008年、ボストンコンサルティンググループに入社。東京オフィス、ワシントンDCオフィスにてデジタル・アナリティクス領域を専門に国内外のプロジェクトに多数携わる。2014年、東京大学 工学系研究科 松尾豊研究室にて産学連携・データサイエンス領域の教育・企業連携の仕組みづくりに従事。同時に東大発AIスタートアップの創業に参画。2016年、株式会社Laboro.AIを創業。代表取締役CEO就任。c株式会社 Laboro.AI

株式会社Laboro.AI 
機械学習エンジニア

濱本 雅史

筑波大学大学院 システム情報工学研究科 博士後期課程修了。博士(工学)。在学中は、データマイニング・テキストマイニングを研究分野とする。2008年よりエンジニアとして自然言語処理の研究開発に携わったのち、 2015年よりBPM/EAIミドルウェアの製品導入コンサルタントを経験。2018年10月、機械学習エンジニアとして株式会社Laboro.AIに参画し、機械学習技術の産業実装・ビジネス適用におけるエンジニアリングを担当。c株式会社 Laboro.AI

パーソルテクノロジースタッフ株式会社 
サービス企画部 サービス企画G スペシャリスト

枝並 陽子

業務要件を取りまとめる役割として、基幹システムの改修や新規サービスの立ち上げに多数携わる。 今回のプロジェクトでも、運用開始後の目指すべき状態目標への接続や、ユーザー視点での新たな価値提供を成果とできるように、プロジェクトを牽引する役割を担う。

パーソルテクノロジースタッフ株式会社 
サービス企画部 サービス企画G

松本 太

大手メーカーにて、DWHの企画・要件定義に携わった後、基幹システム刷新プロジェクトにてデータモデル設計・構築・データ移行領域のプロジェクトリーダーを務める。 2018年、パーソルテクノロジースタッフに入社。本プロジェクトでは主にデータプレパレーションおよびUI作成を担当。
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